歯科衛生士がやってはいけないこと、業務の範囲とは? | 教えてグッピー
2025年8月22日更新

歯科衛生士がやってはいけないこと、業務の範囲とは?

歯科衛生士がやってはいけないこと

歯科衛生士の業務は歯科医師の指示のもと実施されます。業務範囲は幅広く、学校では習わない内容も医院の方針に応じて担当します。GUPPYでは現役歯科衛生士の方々にお話を伺い、やってはいけない業務、すなわち絶対的歯科医行為に関しても聞きました。今回は「歯科衛生士の業務範囲」というテーマでまとめます。

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歯科衛生士の業務範囲は?

歯科衛生士のイメージは、一般の患者さんには「予防の専門家」が強いですが、実際には、歯科医師の指示のもとで幅広く診療補助や保健指導などを担います。

相対的歯科医行為 = できること

歯科衛生士へ指示をする歯科医師は、その歯科衛生士が持つ能力の範囲内と判断した業務を指示しなくてはいけません。歯科衛生士はその指示にもとづいて業務を行います。

これを「相対的歯科医行為」といいます。

歯科衛生士がやってはいけないのは「絶対的歯科医行為」

絶対的歯科医行為とは

もちろん、歯科医師の指示ならどんな医療行為もできるわけではありません。

歯科衛生士養成校の教育内容、知識や技術の水準から「メスで歯肉を切る」「歯を削る」などの行為は行うことができません。これら歯科衛生士がやってはいけないことを絶対的歯科医行為といいます。歯科医師による医学的判断や技術をもってしなければ、患者さんに危害を与える可能性がある行為だからです。

またエックス線撮影装置のボタンを押して被ばくさせるなど、法律で歯科医師のほか一部医療従事者のみに許可された行為も、歯科衛生士が行うと法律違反です。

絶対的歯科医行為の例

ここからは、絶対的歯科医行為にあたる業務の例を紹介します。

歯牙の切削に関連する事項

  • むし歯治療に伴う切削:蝕(虫歯)部分を削り取る行為

  • 補綴治療に伴う支台歯形成:クラウン・ブリッジ・インレーなどを装着するために、健康な歯質を含めて削る行為

  • 義歯安定や咬合調整を目的とした切削:咬合高径の調整や咬み合わせを改善するために歯を削る行為

  • 外傷や感染などに対する切削処置:歯髄処置(根管治療を含む)に伴う歯質の削除

切開や、抜歯などの観血的処置

切開に関する行為の例

  • 膿瘍切開

  • 口腔内小手術

  • 歯肉弁形成

いずれも出血・感染・全身管理が必要となるため、歯科医師に限定されます。

抜歯に関する行為

  • う蝕や歯周病に罹患した歯の抜歯

  • 埋伏歯・難抜歯の外科的抜歯

  • 矯正・補綴のための便宜抜歯

  いずれも歯科医師以外には認められない行為とされます。

精密印象をとることや咬合採得をすること

精密印象・咬合採得は補綴・咬合治療の成否を決める診療行為であり、歯科医師固有の業務に位置づけられます。

精密印象

  • クラウン・ブリッジ・インレーなど補綴物の製作に必要な精密印象

  • 義歯製作における精密印象

歯石除去のときの除痛処置をのぞいた各種薬剤の皮下、皮内、歯肉などへの注射  

絶対的歯科医行為となる注射行為の例です。

  • 皮下注射・皮内注射:薬剤(抗菌薬、ステロイド、ワクチン等)を皮下・皮内に注射する行為

  • 歯肉注射:局所麻酔や抗炎症薬などを歯肉に直接注入する行為

  • 浸潤麻酔・伝達麻酔

  • その他の注射:ボツリヌス毒素注射、ヒアルロン酸注射

その他、エックス線撮影装置による撮影など

  • 撮影の要否判断:どの部位を、どの撮影法で行うかを決定

  • X線装置の操作による撮影:被曝線量の設定、照射条件の選択、撮影実施そのもの

  • 撮影結果の読影・診断

診療補助のやってはいけないこと

現役歯科衛生士の方々のグループインタビューでは、過去に勤務した歯科医院で経験した業務について話があがりました。

  • 新卒で入職した歯科医院で、知らずに精密印象をやっていました。

  • エックス線撮影時に撮影のボタンを押すこと。ただ患者さんから指摘を受けたことで、ボタンは歯科医師が押そうという方針に変わりました。

皆さん現在の歯科医院では同様の場面はないとのこと。しかしながら一人抱えて悩んでしまい、医院との信頼関係が成り立たず、結果的に転職に至ったという話もありました。

ほとんどの医院で基準を守って診療をしているなか、上記のように患者さんの信頼を失ったり、過去には違法行為として罰せられニュースになった事例もあります。

そもそも歯科衛生士の「診療補助」の範囲かどうかは、どのように判断されるのでしょう。

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相対的歯科医行為の基準は?

令和元年の「第2回 医師の働き方改革を進めるための タスク・シフト/シェアの推進に関する検討会」では、資料「診療の補助・医師の指示について」において、以下のような場合に「指示が成立する」とされています。


  1. 対応可能な患者の範囲が明確にされていること
  2. 対応可能な病態の変化が明確にされていること
  3. 指示を受ける看護師(歯科衛生士)が理解し得る程度の指示内容(判断の規準、処置・検査・薬剤の使用の内容等)が示されていること
  4. 対応可能な範囲を逸脱した場合に、早急に(歯科) 医師に連絡を取り、その指示が受けられる体制が整えられていること
    (資料において「歯科医行為」の場合は「医師の指示」を「歯科医師の指示」と読み替える)

このように歯科医師からの指示の内容には判断基準があり、医学的な判断はすべて歯科医師がすることが前提となっています。また歯科医師は、指示を受ける歯科衛生士の習熟度を把握している必要があります。

業務の線引きの考え方は、歯科の各専門学会のガイドラインでも示されています。ただし、各学会の間でも見解が分かれる業務もあるのが実態のようです。

信頼関係の不足がストレスにならないために

インタビューにおいては診療補助で困るのはやってはいけないことだけではなく、業務基準の不明確さが原因のケースもありました。診療体制への不安やコミュニケーション不足が医院との信頼関係に影響してしまうようです。

歯科医院の診療方針は入職しないとわからない部分もあります。ただし業務のギャップをなくすために業務範囲、基準を示した業務基準書などマニュアルを整備している医院も多くあります。

また、歯科医院を選ぶ際には、医院見学に行き先輩歯科衛生士と話をさせてもらう、院内環境を確認するなど自分の目で確認する必要があるでしょう。

歯科医院によっては面接や見学時に、入職前後の相違を無くすために、抱えている課題を積極的に共有してもらえることもあります。

困ったときに相談できる体制があるか、声をあげられる環境であるかは、長い目で見たときに重要なポイントです。転職においては歯科医院のマネジメント面も考慮にいれましょう。 教育体制やマニュアルが整備されているかどうかもぜひチェックしてください。

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