【就職先別まとめ】管理栄養士の仕事内容(病院、福祉、行政、学校/栄養教諭など)専門性を解説します | 教えてグッピー
2025年5月23日更新

【就職先別まとめ】管理栄養士の仕事内容(病院、福祉、行政、学校/栄養教諭など)専門性を解説します

管理栄養士の仕事内容

💡このような内容の記事です
管理栄養士の就職先別の仕事内容/管理栄養士の専門性/職場別の給料

食と栄養のスペシャリストである管理栄養士。この記事では、管理栄養士の基本的な仕事内容、職場別の業務・役割、やりがいや将来性までを詳しく解説します。

管理栄養士は、国家資格の必要な栄養の専門家

  • 病院や給食施設をはじめ、多様な職場で活躍
  • 栄養指導や商品開発など幅広い役割

  • 経験を積めばフリーランスとして働く選択肢もある

管理栄養士の主な就職先(新卒)

管理栄養士の活躍の場は、病院や学校・企業の給食施設、高齢者施設や児童福祉施設といった従来の職場に加え、近年は薬局・ドラッグストア・外食企業など多岐にわたります。

もっとも多い就職先は?

2022年度の管理栄養士課程卒業生の就職データでは、約7割が管理栄養士や栄養士の資格を活かした業務に就いており、中でも最も多いのは病院(診療所を含む)への就職です。次いで企業が多く、健康増進や疾病予防に配慮した給食の提供、食事・栄養指導が主な業務となります。

メーカーでは食品開発にも携わる

また、食品メーカーや外食企業での商品開発やメニュー設計に関わる管理栄養士も多く、食に関する専門知識を活かした企画・開発職としての活躍も見られます。近年では、薬局やドラッグストアにおいて、栄養相談を行う事例も増えており、生活者に近い立場で健康支援を行う役割も広がっています。

専門性の高い分野での給食提供も大切な役割

委託給食会社に就職した場合は、医療施設や学校、介護施設などさまざまな現場に配属され、多様な経験を積むことができます。幅広い分野で柔軟に働きたい人にとっては魅力的な選択肢といえるでしょう。

一方で、介護保険施設や児童福祉施設など、食事提供が必須の施設では、管理栄養士の設置が義務づけられており、なくてはならない存在です。行政分野では、健康づくりや栄養指導、食育イベントの企画、給食施設の監査・指導などが主な業務となります。

また、栄養士資格以外の業務に就く場合でも、食や栄養に関する知識を活かして働いている人は少なくありません。

そして、実務経験を積みスキルを磨いた後には、企業や施設と契約し、フリーランスとして独立するという道もあります。働き方やキャリアの選択肢が多いことも、管理栄養士という仕事の魅力の一つです。

就職先別にくわしく:管理栄養士の仕事内容

管理栄養士の主な仕事内容は栄養指導・栄養管理・給食管理ですが、働く場所によって細かな違いがあります。職場によって仕事内容がどう変わるのかを見ていきましょう。

病院・クリニック

まずは、病院・クリニックでの仕事内容です。

  • 治療食の管理や栄養指導を通じて治療効果の向上に貢献

  • 栄養サポートチーム(NST)など医療チームでも中心的役割を担う

  • 医師の業務を支える専門職としての活躍が期待されている

管理栄養士の病院での仕事内容

病院や診療所働く管理栄養士は、治療の一環として食事と栄養の管理を行い、患者さんの病状に応じた栄養指導を担当します。

管理栄養士は、検査数値や面談をもとに患者さんの栄養状態を評価し、治療食を調整します。さらに、手術後の回復力向上を目的とした栄養管理や、入院期間の短縮にも大きく貢献しています。退院後の栄養指導や外来患者への対応も重要な役割のひとつです。

病院によっては、調理部門を給食会社に委託せず、食材の発注・管理や調理業務も直接担当するケースもあります。

また、管理栄養士は、NST(Nutrition Support Team:栄養サポートチーム)の一員としても活躍します。NSTは、医師・看護師・薬剤師などと連携し、患者さん一人ひとりに最適な栄養療法を提供するチームです。この中で管理栄養士は、栄養の専門家として中心的な役割を担っています。

経管栄養や点滴による栄養補給など、食事以外の専門知識も求められ、常に最新の栄養学的知見に触れながら対応することが求められる責任ある仕事です。

また、NST以外にも、褥瘡(じょくそう=床ずれ)チームや感染管理チームなど、栄養との関わりが深い医療分野でチームに参加する事例が増えています。

さらに、近年は医師の働き方改革の影響により、医師が担っていた業務の一部を他職種が担う動きが進んでいます。今後は、食事オーダーや栄養指導、低栄養患者の栄養評価を管理栄養士が主導する場面や、医師へ栄養療法の提案を行う場面がより増えていくと予想されます。

Q. 歯科医院で管理栄養士が活躍できる仕事は?

近年、歯科医院では「食べる」「咬む」機能を支えるために、口腔機能訓練や栄養指導に取り組むところが増えています。
管理栄養士がチームの一員として、摂食嚥下や生活習慣の改善に関わるケースも多く、医科と歯科の連携が進む中で注目されています。
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高齢者施設(介護施設・特別養護老人ホーム)

  • 高齢者一人ひとりに合った食事対応が求められる重要な職場

  • 栄養ケア・マネジメント制度で中心的な役割を担う

  • 介護スタッフや家族との連携も含めた多職種協働が必要

介護施設数と管理栄養士の配置

多くの管理栄養士が活躍する福祉施設の中でも、特に近年重要視されているのが「介護施設」です。高齢者に向けた栄養サポートが重視されており、管理栄養士の専門性が必要とされています。

代表的な介護施設には、在宅復帰を目指す高齢者が医療・介護・リハビリを受けながら生活する「介護老人保健施設(老健)」や、常に介護が必要な高齢者が入所する「特別養護老人ホーム(特養)」があります。また、デイサービス施設や地域包括支援センターなど、在宅支援型の施設でも管理栄養士の活躍が見られます。

さらに、公的な施設だけでなく、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅といった民間の高齢者向け施設でも管理栄養士が重要な役割を担っています。

介護施設では、きざみ食やミキサー食など、利用者の状態に応じた食事提供が求められます。介護スタッフと連携しながら、食事の介助や栄養摂取の工夫を行うことで、利用者が安全かつ楽しく食事できる環境づくりを行います。食事の時間は、利用者にとって大きな楽しみであり、心のケアにもつながる大切な支援です。

また、介護保険制度に導入されている「栄養ケア・マネジメント制度」では、入所者一人ひとりの健康状態を評価し、必要に応じて栄養指導や摂食・嚥下リハビリなどのケア計画を立てます。この制度においては、管理栄養士が中心的な役割を担い、看護師・介護職員・リハビリスタッフなどとの連携を通じて、利用者にとって最適な栄養支援を行います。

こうした制度的な背景もあり、今後は管理栄養士の雇用を積極的に進める介護施設がますます増えていくことが予想されます。

Q. 高齢者施設での管理栄養士の役割は?

利用者一人ひとりの健康状態に応じた食事提供や栄養ケアマネジメントなど、日常の健康維持を支援する役割があります。 高齢者施設の求人をチェック

給食施設

  • レシピ作成から衛生管理まで、多様な業務に対応

  • 直営と委託の運営形式があり、働き方に違いがある

  • 利用者への保健指導など調理以外の役割も重要

給食施設と管理栄養士数

給食施設では、利用者に合わせたレシピの作成、スタッフへの調理指導、食材の発注、衛生管理などが管理栄養士の基本的な業務となります。

法律では、「特定かつ多数の者に対して、継続的に1回100食以上または1日250食以上の食事を提供する施設」を「特定給食施設」と定めており、自治体が指導対象としています。中でも大規模な病院や福祉施設などには、管理栄養士の配置が義務付けられています

給食施設には主に2つの運営形態があります。ひとつは、施設と給食提供が一体となった直営形式。もうひとつは、病院や福祉施設、企業の社員食堂などに給食会社がサービスを提供する委託形式です。

直営形式では、その施設の理念や方針が業務内容に大きく反映される傾向があります。一方、給食委託会社で働く場合は、複数の施設で経験を積める機会が多く、幅広いスキルを身に付けたい人に適しているでしょう。大手委託会社では多くの管理栄養士が勤務しており、仲間と共に成長しやすいというメリットもあります。

給食施設で働く多くの管理栄養士は、まず調理現場に積極的に関わり、大量調理の流れや基本を学びます。学校での実習経験があっても、最初のうちは体力的に大変さを感じる人も少なくありません。

さらに、調理だけでなく、利用者に対する保健指導も大切な仕事です。利用者の年齢や健康状態に合わせた栄養指導や、生活習慣全体に目を向けたアドバイスができるよう、幅広い知識と対応力が求められます。

学校

  • 栄養教諭は給食管理に加えて食育の授業にも携わる

  • 教員免許と管理栄養士資格の両方が必要

  • 子どもの食習慣に関わるやりがいのある仕事

栄養教諭・学校栄養職員の配置人数

小中学校では、管理栄養士が「学校栄養職員」や「栄養教諭」として、給食管理や食育活動に携わっています。

かつては、給食管理を中心に担当する学校栄養職員が主流でしたが、現在では、栄養や食に関する教育も担う「栄養教諭」として活躍する人が増えています。栄養教諭になるためには、管理栄養士の資格に加えて教員免許状が必要であり、教員採用試験にも合格しなければなりません。

2022年度には、管理栄養士課程の卒業生のうち118人が栄養教諭として就職しました。既存の学校栄養職員が教員免許を取得し、栄養教諭へ移行するケースも多く見られます。

給食管理の業務では、メニューの作成や食材の発注、調理スタッフへの指導、衛生管理などを中心に行います。また、年齢に応じたエネルギー量や栄養バランスの配慮、アレルギーへの個別対応も欠かせません。給食センターに勤務し、複数の学校を担当することもあります。

食育においては、給食の時間以外にも、社会科や家庭科の授業と連携して、食文化や農業、調理、食料流通など多岐にわたる内容を取り上げた授業を実施します。担任教員が食をテーマにした授業を行う場合には、プログラム作成を支援することもあります。

また、子どもの食生活を改善するために、児童・保護者・教職員に向けた指導や相談を行うことも大切な役割です。子ども時代の食習慣は一生に影響するといわれており、教育現場でのこの仕事には大きなやりがいがあります。

企業

  • 商品開発の各工程に関わり、食の専門家として知識を発揮

  • 栄養や食品の知識に加え、消費者のニーズやトレンド感覚も重要

  • 配属や選考は企業により異なり、幅広い視野と準備が求められる

管理栄養士の商品開発の流れ

食品メーカーでは、管理栄養士が食の専門家として商品開発に携わるケースがあります。商品開発には、市場調査、企画立案、試作品の作成など、さまざまな工程があり、管理栄養士が関わる可能性のある業務は多岐にわたります。

商品開発といっても、その仕事内容は企業や配属部署によって異なります。食品や栄養の専門知識に加えて、市場のトレンドや消費者の嗜好を読み取る力が必要です。また、試作品を何度も作り直す粘り強さや、予算内で最適な素材や製造方法を見つける柔軟性も求められます。部署間での連携も多く、コミュニケーション能力も重要です。

ゼロから新商品を開発するだけでなく、既存商品のリニューアルや新しい味・フレーバーの提案、使い勝手の改善といった業務も含まれます。さらに、管理栄養士には商品の特性を活かしたレシピ開発や調理法の提案が求められることもあります。

企業によって採用の枠組みは異なり、総合職としての応募や技術職としての採用などがあります。希望するメーカーがある場合は、採用サイトなどで募集職種や部署の業務内容をよく確認しておくことが大切です。

ただし、開発部門を希望しても、必ずしも配属されるとは限らず、他部署への配属になる可能性もあります。また、農学部や理学部、修士課程修了者などがライバルになる場合も多く、競争も激しい傾向があります。

そのため、栄養学の知識だけでなく、広く「食」に関する感性や柔軟な視点を身につけておくことが、食品メーカーで活躍するための大きな強みとなります。

スポーツ関係

  • スポーツ施設では、運動と合わせた栄養指導の需要が高まっている

  • アスリートには競技力向上を目的とした専門的な栄養管理が必要

  • 資格取得やネットワークづくりなど、自発的な努力が求められる

スポーツに関連した仕事は、近年人気の高い分野となっています。フィットネスジムやスポーツクラブでは、利用者の体づくりに合わせて栄養指導やカウンセリングを行う場面が増えており、管理栄養士が活躍する機会も広がっています。

フィットネスジムやスポーツクラブでは、ダイエットや筋力アップといった利用者の目標に沿った運動指導を行っていますが、運動だけでは成果に限界があるため、栄養面からのサポートも不可欠です。スポーツの基本的な知識に加え、幅広い世代や目的に対応した、きめ細かな対応力が求められます。特に、高齢者向けの介護予防や健康維持など、多様な目的に応じたサポートが重要です。

一方、アスリートへの栄養管理はより専門性の高い仕事です。食事調査や体力測定を通じて、競技力向上のための課題を見つけ出し、改善につなげる支援を行います。コーチやマネージャーとの連携、チームへの帯同、試合遠征時のサポートなども含まれ、現場での実践力と専門的な知識が求められます。チーム栄養士として、全体のメニュー作成を担当することもあります。

このような高度な業務に携わるには、ある程度の現場経験や実績が必要です。スポーツ関連の仕事を目指す人は、関連する資格を取得したり、実際にスポーツ現場で働いている管理栄養士が参加する勉強会などに積極的に参加することで、自ら道を切り開いていく姿勢が求められます。

将来的にスポーツ分野での活躍を目指すなら、専門知識の習得と現場経験の積み重ねを大切にしながら、自分なりのキャリアを描いていくことが大切です。

スポーツの仕事に役立つ資格

資格名公認スポーツ栄養士健康運動指導士健康運動実践指導者
内容競技者の栄養・食事に関する栄養教育、食環境の整備などを行う。対象となる競技者は、トップアスリート、ジュニア層、健康増進を目的としたスポーツ愛好家まで様々。保健医療関係者と連携し、安全で効果的な運動プログラムを作成、実践指導計画の調整等を行う。資格者の多くはフィットネスジム、病院・診療所、介護施設等で活躍している。健康づくりを目的として作成された運動プログラムに基づいて実践指導を行う。健康運動指導士に比べ、自ら見本を示せる実技能力、集団に対する運動指導技術が重視される。
取得するにはスポーツ栄養指導経験またはその予定がある管理栄養士が指定の講習を受け、スポーツ現場でのインターンシップを含む検定試験に合格する。講習会を受講、または養成校で講座を修了し、必要単位を取得、試験に合格して認定。医療系資格者や体育系学科出身者等に受講資格がある。講義16単位、実習17単位を3期9日間で修得し、試験に合格して認定。医療系資格者や体育系学科出身者、教育関係者等に受講資格がある。

行政

  • 保健所・保健センターで地域住民への栄養指導や調査を担当

  • 健康づくり事業や食育イベントの企画力も求められる

  • 公務員として働くには試験対策と情報収集が重要

行政で働く管理栄養士

都道府県や市町村で働く管理栄養士は、「行政栄養士」と呼ばれ、地域の給食施設への指導や住民への栄養・健康指導、調査・情報提供などを担当します。

多くは保健所や保健センターに配属されます。保健所は都道府県や政令指定都市などに設置され、地域の保健サービスを統括する役割を担っています。保健センターでは、健康診断での栄養指導や食育イベントなど、住民により近い立場でサービスを提供します。

国としても、各自治体が健康づくり・予防事業に積極的に取り組むことを推進しており、行政栄養士への期待も年々高まっています。業務内容は幅広く、イベント企画や住民対応のスキルも求められます。

また、公務員として採用されると、保健センター以外に公立の学校・病院・高齢者施設・保育園などに配属されることもあります。異動の可能性があるため、志望する自治体の方針を事前に確認しておきましょう。

公務員になるには、公務員試験の合格が必要です。多くの自治体では5月〜9月に一次試験が行われますが、毎年の募集があるとは限らず、欠員が出たときのみ募集する自治体もあります。求人情報はこまめに確認し、筆記試験対策には早めに取り組むことが大切です。

さらに、試験に臨む際は企業就職と同様に、その自治体の保健・福祉政策を調べて、特徴や取り組み内容を理解しておくことが成功への近道です。

保育園

  • 子ども一人ひとりに合わせた食事とアレルギー対応が重要

  • 保護者への食育や家庭でのサポートの役割も大きい

  • 子どもと直接ふれあえる機会が多く、やりがいのある職場

保育園で働く管理栄養士

保育所で働く管理栄養士は、子どもの成長に合わせた食事とおやつのメニュー作成や食事の提供、保護者を含めた食育活動が主な仕事となります。

新卒で児童福祉施設に就職する人数の推移を見ると、その多くが保育所やこども園への就職であり、児童養護施設や障害児入所施設なども含まれます。給食業務を委託・派遣で担うケースもあります。

保育所では、乳児から就学前までの幅広い年齢層を対象に、離乳食を含めた年齢に応じた献立を考案します。また、アレルギー対応も重要な業務のひとつです。厚生労働省の資料によれば、食物アレルギーを持つ子どもの割合は4.0%にのぼり、いずれの保育所でも避けては通れない課題です。

こうした中で、医療的知識をもつ管理栄養士が対応することの重要性が高まっており、アレルギーを持つ子どもへの個別の栄養評価や対応が期待されています。

また、家庭での食育が不十分な場合も多く、保育所には保護者への情報提供やサポートといった「家庭に代わる支援」も求められています。そのため、子どもと保護者の双方に対する食育活動を行うことも重要な業務の一つとなっています。

こうした背景から、乳幼児施設における管理栄養士の需要は年々高まりを見せており、今後さらに管理栄養士を雇用する保育所は増加すると見込まれています。

保育所での仕事は、給食の時間に子ども一人ひとりの食べ方を確認したり、食育イベントを実施したりと、子どもと直接ふれあう場面が多いことが特徴です。子どもが好きな人にとってはやりがいを感じやすい職場といえるでしょう。

なお、公立保育所で働く場合は公務員試験の受験が必要になるため、早めの準備や情報収集がカギとなります。

薬局

  • 治療中の患者さんから健康な地域の人まで、栄養指導ニーズが拡大

  • 管理栄養士の在籍により、専門的かつ効果的な栄養指導が可能に

  • 「健康サポート薬局」ではイベント企画など地域との連携も

  • ドラッグストアでも活躍の場が広がり、医薬品販売や医療事務にも対応

薬局で働く管理栄養士

薬局では、治療中の患者さんだけでなく、健康な地域住民に向けた栄養や食事の指導ニーズが高まっており、管理栄養士の活躍の場も広がっています

薬局の役割は、単に薬を調剤するだけではありません。患者さんが適切に服薬できるようサポートすることはもちろん、日々の生活習慣、特に食事に関する指導も大切な業務のひとつです。中でも、糖尿病などの生活習慣病は食事内容が治療に大きく関わるため、栄養面での支援が重視されています。

管理栄養士が在籍している薬局では、より専門的なアプローチが可能になります。実際に、食事指導を通じて生活習慣病の症状が改善されたという報告もあり、その効果が期待されています。

また、生活習慣病以外でも、薬の副作用によって食欲が落ちている方に対する相談対応や、個別の栄養アドバイスなど、幅広い支援を行っています。

薬局内での取り組みとしては、店内掲示やリーフレットの作成を通じて栄養情報をわかりやすく発信するほか、健康な方を対象とした栄養指導を行う機会もあります。

特に、地域の健康拠点としての役割を担う「健康サポート薬局」では、管理栄養士が中心となって、栄養に関するイベントや講習会を企画・実施することも多く、地域住民の健康増進に貢献しています。

さらに、ドラッグストアでも管理栄養士の需要は高まっています。2022年度には、管理栄養士養成課程の卒業生のうち約5.5%にあたる572人が、薬局やドラッグストアに就職しました。こうした現場では、登録販売者の資格を取得して医薬品の販売に関わったり、医療事務を担当したりするほか、サプリメントや健康食品の専門知識も求められるなど、多様な役割を担っています。

在宅医療

  • 栄養状態の確認や献立提案、家族への料理指導などを個別に対応

  • 医療保険・介護保険の制度に基づいてサポート

  • 低栄養やフレイル、摂食嚥下障害などの課題に対応する

  • 家庭ごとの状況を考えた、実現可能なアドバイスが大切

  • 食の支援は精神面のケアにもつながる

在宅訪問

在宅療養をしている方への栄養指導では、現在の食事や栄養の状況を把握し、献立の提案や家族への料理指導など、その人の生活に合わせた支援を行います。

この訪問栄養指導は、医療保険では「在宅患者訪問栄養食事指導」、介護保険では「居宅療養管理指導」として実施され、主治医の指示のもとで行うのが原則です。

訪問先は、自施設の患者さんの自宅だけでなく、地域のほかの医療機関や介護事業所などから依頼されることもあります。

対応が求められる主なケースとしては、低栄養やフレイルの予防・改善、慢性的な生活習慣病の栄養管理、摂食嚥下障害のある方への支援などが挙げられます。

支援内容は、体重や栄養状態、現在の食事の状況を確認し、メニューや食べやすい工夫を提案することが中心です。また、調理を担当する家族やヘルパーに対して、実践的な料理指導を行うこともあります。

さらに、医師・看護師・ケアマネジャーなどとの連携が欠かせず、多職種チームの一員としての役割も重要です。

退院後に十分な指導が受けられなかった患者さんに対しては、在宅での生活環境や家族構成を踏まえた現実的な提案が必要です。生活の様子を観察・聞き取りしながら、その家庭で無理なく実践できるアドバイスを行うスキルが求められます。

このような在宅支援は、一定の経験を積んだ管理栄養士が力を発揮できるフィールドです。

また、食事は「生きる喜び」にもつながる要素であり、栄養指導に取り組む際には、精神面の支えとなる姿勢も大切にされています。

栄養ケア・ステーションにおける管理栄養士の役割

  • 地域住民が食や栄養について気軽に相談できる拠点

  • 健康改善から在宅・スポーツ支援まで幅広いニーズに対応

  • フリーランスや兼務登録も可能で、多様な働き方ができる

栄養ケア・ステーションは、地域の人々が管理栄養士や栄養士に、栄養や食事について相談できる施設です。

所属する管理栄養士は、健康診断で生活習慣の改善が必要とされた方、在宅療養中で食事に不安を感じている方、スポーツに取り組む人など、多様な栄養ニーズに対応しています。

また、常勤の管理栄養士がいない医療機関からの依頼を受け、医療保険や介護保険を活用して訪問による食事指導を行うこともあります。

このような栄養ケア・ステーションは、各都道府県の栄養士会が運営しているほか、日本栄養士会が認定する「認定栄養ケア・ステーション」も全国に広がりを見せています。開設主体は病院や薬局、個人の管理栄養士など様々です。

個別相談だけでなく、行政や地域包括支援センターからの依頼を受けて講演活動を行ったり、地域住民向けに独自の勉強会やイベントを企画・実施することもあります。

また、フリーランスの管理栄養士・栄養士が所属するケースも多く、医療機関や介護施設に勤務する人が地域連携の一環として兼務登録することもあります。

栄養ケア・ステーションは、病気や介護が必要な人だけでなく、「少し気になる」「相談したい」と思ったときに気軽に立ち寄れる場所としての認知も広がりつつあります。

特に、フリーランスとして活動する管理栄養士にとっては、活動の拠点として栄養ケア・ステーションを活用することも有効な選択肢といえるでしょう。

管理栄養士の主な専門性

管理栄養士には、献立の作成や栄養指導といったさまざまな役割があります。具体的にはどのような業務を行うのかを説明します。

献立作成と栄養バランスの調整

管理栄養士の代表的な業務の一つが、栄養バランスを考えた献立の作成です。病院であれば患者さん、小学校であれば児童、社員食堂であれば社員というように、食事を提供する相手の健康状態や年齢、活動量に応じた献立を作成します。食物アレルギーがある方や食事制限が必要な方もいますので、そういった制限を考慮しながら栄養バランスの良いメニューを考案する知識と経験が求められます。

栄養指導と健康教育

医療機関や福祉施設などで、個別または集団に対する栄養指導を行うことも管理栄養士の業務の一つです。対象となる方の持病の有無や年齢に合わせた指導をすることで、健康維持や疾病予防をサポートします。また、地域の健康イベントやセミナーなどで食生活や栄養に関する相談会や講演を行うこともあります。

栄養状態のアセスメント

対象となる方の栄養状態を客観的に分析・評価することを「栄養アセスメント」といい、これも管理栄養士に求められる大切な役割です。主に病院や福祉施設、保健所や保健センターなどで、身体測定や血液検査のデータをもとに栄養状態を評価し、栄養管理計画の立案と指導を行います。特定健診で数値に問題があった方への特定保健指導にも、栄養アセスメントによる栄養指導が含まれています。

仕事のやりがいと魅力

管理栄養士には、食と栄養に関する知識と経験をもとに、人々の健康をサポートできるという魅力があります。医学や栄養学の知識を通して疾病予防や健康増進に貢献できる点は、大きなやりがいにつながります。また、医療機関から教育機関や福祉施設、企業やスポーツの現場まで、多種多様な業界で活躍できることも魅力の一つです。正社員や公務員、フリーランスなど、働き方も多様化しています。

将来性とスキルアップの可能性

日本の高齢化は継続しており、2040年には人口のおよそ35%が65歳以上になると推計されています。また、厚生労働省が出している令和5年簡易生命表によると、2023年の平均寿命は男性が81.09歳、女性が87.14歳となっており、少子高齢化が進む日本において、健康志向は年々高まりを見せています。

このような状況から、管理栄養士の需要は今後さらに増加する見込みです。またそれに伴い、最新の栄養学や医療知識の習得など、より専門性が求められるようになることも予想されます。裏を返せば、管理栄養士は認定制度などを活用して専門性を高めていくことで、長期的なキャリアアップが目指せる職業だといえます。

認定管理栄養士

管理栄養士の給料

  • 栄養士の平均年収は約379万円、管理栄養士の給料は就職先によって変わる傾向

  • 活躍の場は医療・福祉だけでなく多様な業種へ広がっている

  • 初任給だけでなく将来のキャリアとスキル獲得を見据えた職場選びが重要

管理栄養士の給料

厚生労働省の調査によると、管理栄養士の平均年収は390万1,700円、月給は各種手当込みで26万8,100円、賞与(ボーナス)の平均は68万4,500円となっています。初年度の年収はおおよそ251万円程度で、そこから50歳代にかけて年収が500万円を超える傾向にあります。ただし、これらの数字は「栄養士」の統計を含んでおり、より専門性の高い業務を担う管理栄養士の給与は、これよりやや高めであると推測されます

なお、公的には「管理栄養士の給与」として独立した統計は発表されていないため、厚生労働省の調査における「常勤栄養士」の項目を参照しています。

この水準は他の医療職と比べて決して高いとは言えませんが、医療・介護の現場では栄養ケアの重要性が見直されており、また、生活者の間でも食の安全や健康的な栄養摂取への関心が高まっています。こうした背景から、今後は栄養の専門職に対する評価や待遇の向上が期待されています。

また、就職先/職域による差もあります。

管理栄養士の職域別 年収中央値

職域年収中央値(万円)備考
医療350万円病院・クリニック等
福祉350万円介護施設、障害者施設など
食育・教育450万円栄養教諭、学校栄養職員等(公務員比率高)
給食350万円給食委託会社、社員食堂等
行政450万円保健所、市町村保健センター等
企業350万円食品・製薬・保健施設など多様
研究・教育550万円養成施設、研究機関等
フリーランス等150万円地域活動、自営など
その他350万円-

現在、管理栄養士の活躍の場は、病院や給食施設だけでなく、歯科医院、薬局、健康関連施設、食品メーカーなど多岐にわたります。これらの広がりは、先輩管理栄養士たちが職域を切り拓いてきた成果でもあります。

一人ひとりがそれぞれの職場で専門性を発揮し、実績を積み重ねていくことが、管理栄養士としての社会的評価を高め、待遇改善にもつながっていくでしょう。

そのためにも、就職先を選ぶ際は、単に初任給や勤務地だけで判断するのではなく、「自分が管理栄養士としてどのように活躍できるか」「どのようなスキルを磨けるか」といった将来視点をもつことが大切です。

給与モデルも、初年度だけでなく、3年後・5年後といったキャリアの中期的展望を見据えて確認し、自分に合った職場選びを心がけましょう。

ワークライフバランス

  • 育児休業の取得率は上昇しており、復職しやすい環境も増加

  • 管理栄養士の勤務先により、育児との両立のしやすさには差がある

  • 制度だけでなく、実際の運用状況や職場の理解度を確認することが大切

育児と仕事の両立は、社会全体での理解が進んでおり、管理栄養士にとっても実現しやすくなってきました。ただし、職場の規模や勤務体制によって事情が異なるため、就職前に実態を確認することが重要です。

厚生労働省の調査によると、在職中に出産した女性のうち、育児休業を取得した割合は1990年代後半から上昇し、2007年度以降は80%以上で安定しています。このことから、出産後も同じ職場で仕事を続けることが一般的になりつつあるといえます。

さらに、男性の育児休業取得率も近年は急激に上昇しており、「育児は女性の役割」という固定観念も徐々に薄れてきています

とはいえ、管理栄養士の勤務先によっては、在籍人数が少ないなどの理由から育児休業を取りにくいケースもあります。特に、1施設に1人の管理栄養士しかいないような職場では、休業中の代替が難しいため、制度があっても利用しづらいという実情があります。

また、管理栄養士の職場は、早朝勤務や宿直勤務があるなど、勤務形態が多様であることも育児との両立を難しくする要因です。

大きな傾向としては、委託給食会社や大規模病院などでは育児休業や時短勤務が導入されやすく、比較的働きやすい環境が整っています。一方で、小規模な医療・福祉施設では制度があっても実際に活用するのが難しい場合があります。

このため、就職先を選ぶ際には、初任給や仕事内容だけでなく、育児休業制度の有無や実際の取得率、育児中の勤務調整の実態についても調べておくことが大切です。

また、入職後も、実際に結婚・出産を経験している先輩社員に話を聞いたり、両立の工夫について情報収集しておくことで、自分らしい働き方を実現しやすくなります。

まとめ

管理栄養士は、健康や栄養に関する専門知識を生かして、幅広い環境で人々の健康を支える重要な仕事です。需要の拡大に伴い、今後も安定的かつ長期的なキャリアアップが目指せます。職場ごとの仕事内容の違いや特徴を理解し、自分に合ったキャリアの方向性を見つける事が大切です。

Q. どんな職場がある?

管理栄養士は、病院や高齢者施設、学校、保育園、行政機関、スポーツチーム、給食施設など、幅広い職場で活躍しています。職場によって業務内容や求められるスキルは異なるため、自分に合った環境を選ぶことが大切です。 管理栄養士の求人を見る

よくある質問

管理栄養士の就職先にはどんな職場がある?
主な就職先には、病院、介護施設、学校、企業、保健所、スポーツ関連施設などがあります。職場により業務内容は大きく異なるため、自分に合った環境を見つけることが大切です。
管理栄養士の求人にはどのような条件がありますか?
管理栄養士向けの求人には、「新着求人」「週休2日以上」「残業なし」などの条件が用意されています。ライフスタイルや希望の働き方に合わせて探すことができます。
管理栄養士と栄養士の違いは?
管理栄養士は、より高度な栄養管理や栄養指導を行う国家資格で、医療や介護の現場で活躍します。一方、栄養士は主に学校や保育施設などで集団給食の運営・管理を担います。
管理栄養士に求められるスキルは?
専門的な栄養知識に加え、コミュニケーション能力、チーム医療での連携力、個別対応力が求められます。相手の立場に立った提案力や問題解決力も重要です。
スポーツ分野で働く管理栄養士の仕事内容は?
アスリートの競技力向上や体調管理のために、個別に応じた食事・栄養指導を行います。トレーニングや試合スケジュールに合わせた栄養プランの作成が主な業務です。
病院で働く管理栄養士の仕事内容は?
入院・外来患者に対して治療食の提供や栄養指導を行い、医師や看護師と連携しながら治療の一環を担います。NST(栄養サポートチーム)の一員として活動する場合もあります。
高齢者施設における管理栄養士の役割は?
高齢者の健康状態に合わせた食事の提供や栄養ケアマネジメントを通じて、日常の健康維持や生活の質の向上をサポートします。
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