日本の医療保険制度とは
日本の医療保険制度は、大きく「公的医療保険」と「民間医療保険」の2種類に分けられます。このうち公的医療保険は、病気やけがをしたときに、医療費の一部が公的な制度によって給付される仕組みで、日本ではすべての国民がいずれかの公的医療保険に加入する「国民皆保険制度」が採用されています。
この公的医療保険の基本的な仕組みや種類(被用者保険・国民健康保険・後期高齢者医療制度)について解説します。
医療保険の仕組み
病院や歯科医院などで診療を受けた際に支払う金額は、その診療にかかる医療費のうち、原則1割~3割となっています。自己負担割合は、被保険者(患者)の年齢や所得によって決まります。
自己負担額を除いた残りの医療費は、保険者(健康保険組合、市町村など)から保険医療機関に支払われます。この財源となるのが、被保険者や事業主が納める健康保険料です。
このように日本の医療保険制度は、加入者が保険料を出し合い、必要な人の医療費を支えるという「相互扶助」の仕組みで成り立っています。
医療費の自己負担割合
保険証を持っている場合、病院やクリニックで支払う金額は、医療費の一部(自己負担分)で済みます。自己負担割合は、加入している公的医療保険や年齢・所得によって異なります。
- 小学校入学前:2割
- 小学校入学後~69歳:3割
- 70歳~74歳:2割(現役並み所得者は3割)
- 75歳以上(後期高齢者医療制度):1割(一定以上の所得がある方は2割、現役並み所得者は3割)
医療保障制度の種類
日本の医療保障制度には、医療保険のほかに「公費負担医療制度」「介護保険制度」「労災保険制度」があります。
- 公費負担医療制度:特定の病気や障害を対象として診療費の全額または一部を公費で負担する制度と、生活保護法などに基づく医療扶助(公的援助制度)を指します。水痘ワクチンや5種混合ワクチンといった定期予防接種は、この公費負担医療制度によって全額または一部が公費で賄われます。
- 介護保険制度:要介護者・要支援者に対して介護サービスを給付する制度です。対象は40歳から64歳までの医療保険加入者(第2号被保険者)と、65歳以上の方(第1号被保険者)で、要介護認定または要支援認定を受けることで介護サービスを利用できます。
- 労災保険制度:業務中や通勤中の病気やけがに対して給付を行う制度で、費用は原則として事業主が負担する労災保険料によって賄われています。
国民皆保険制度とは
日本の医療保険制度の特徴の一つは、国民皆保険制度であるということです。生活保護を受けている人を除き、すべての国民が何らかの公的医療保険に加入して保険料を支払うことになっています。これは「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という憲法の理念に基づいています。
医療保険の種類
医療保険には、国民健康保険、被用者保険、後期高齢者医療制度という3つの種類があります。それぞれの仕組みや対象者を解説します。
国民健康保険
国民健康保険は、ほかの医療保険制度に加入していないすべての国民を対象とした医療保険制度です。都道府県及び市町村が保険者となる一般国保(市町村国保)と、業種ごとに組織される組合国保(国民健康保険組合)から構成されています。被用者保険に設けられている傷病手当や出産手当金などは国民健康保険にはありません。また、扶養認定もないため、世帯の加入者が増えた場合にはその分保険料も増えることになります。
被用者保険
被用者保険は、法人や地方公共団体などに雇われている人が加入する健康保険です。保険料は給与に応じた標準報酬月額で計算され、労使折半で支払われるという特徴があります。被用者保険では、扶養の概念があるため、被保険者に配偶者や子どもなどがいる場合には扶養に含めることで、一定の保険料で家族を扶養することができます。
| 項目 | 国民健康保険 (市町村国保・国保組合) |
被用者保険 (協会けんぽ・健保組合・共済組合) |
|---|---|---|
| 加入対象 | 自営業者、フリーランス、無職、高齢者など | 会社員、公務員、その被扶養者 |
| 保険者 | 都道府県+市町村(市町村国保)/ 国保組合 | 協会けんぽ、健康保険組合、共済組合 |
| 扶養制度 | なし(人数分の保険料) | あり(扶養家族は保険料不要) ※条件あり |
| 保険料 | 所得・世帯人数などで決定(自治体ごとに異なる) | 給与に応じて決定(労使折半) |
| 傷病手当金 | なし | あり(最長1年6ヶ月支給) |
| 出産手当金 | なし | あり(産前産後の休業補償) |
| 出産育児一時金 | あり(多くの市町村で50万円) | あり(50万円) |
| 世帯単位の加入 | 〇(世帯で加入。全員保険料対象) | ✕(個人単位+扶養認定) |
| 保険者の数 | 市町村国保:1,716/国保組合:1,883 | 協会けんぽ:1/健保組合:約1,380/共済組合:85 |
| 加入者数(参考) | 市町村国保 約2,413万人 | 協会けんぽ 約3,944万人/健保組合 約2,820万人/共済 約982万人 |
| 平均年齢(参考) | 54.2歳 | 協会38.9歳/健保35.9歳/共済33.1歳 |
| 特徴 | 保険料が世帯人数で増減・高齢者多数 | 会社負担があるため保険料が比較的安定 |
後期高齢者医療制度
後期高齢者医療制度は、75歳以上の人が加入する公的医療保険制度です。また、65歳から74歳の方で一定の障害がある方も、認定を受けることで後期高齢者医療制度へ加入することができます。
マイナ保険証:デジタル時代の健康保険証
2021年10月20日から、マイナンバーカードを健康保険証として利用する本格運用が始まりました。ここではその概要と利用方法について解説します。
マイナ保険証とは
保険証代わりに利用できるマイナンバーカードのことを「マイナ保険証」と呼びます。マイナ保険証と従来の保険証との大きな違いは、提供可能な「医療情報の幅」です。従来の保険証は保険の資格確認が主でしたが、マイナ保険証は、本人の同意があれば、薬剤情報・健診情報・診療歴など過去の医療情報を医療機関等で共有できます。
これにより、初めてかかる医療機関でも既往歴に応じた診療につながるというメリットがあります。さらに、同一月・同一医療機関であれば、限度額適用認定証なしでも高額療養費制度の限度額を超えた窓口支払いが軽減されるケースや、医療費控除の手続きが簡略化されるメリットも(※条件あり)あります。
マイナ保険証の利用方法
マイナンバーカードを保険証として使うには、まず「健康保険証利用登録」が必要です。登録方法は、医療機関・薬局に設置された顔認証付きカードリーダー、またはマイナポータル/セブン銀行ATMを利用して申請できます。登録後は、医療機関・薬局の受付でマイナンバーカードを顔認証付きカードリーダーに「かざす」だけで、保険証として利用できます。
国民健康保険と社会保険の切り替えについて
会社員からフリーランスになった場合などには、加入している保険の切り替え手続きが必要になります。国民健康保険と社会保険の切り替え手続きについて解説します。
国保から社保への切り替え
個人事業主をしていた人や無職だった人が、社会保険(健康保険)の適用事業所に就職した場合や、家族の健康保険の被扶養者になった場合には、国民健康保険の喪失手続きが必要です。手続きが行われないと国民健康保険料(税)の請求が続くため注意が必要です。
国民健康保険の喪失手続きは、原則として14日以内にお住まいの市区町村の窓口で行います。持参するものは、これまで使用していた国民健康保険証、本人確認書類に加えて、新しく加入した健康保険から発行される「資格情報のお知らせ」「資格確認書」「資格取得・喪失確認通知書」など、加入状況が確認できる書類です。
社保から国保への切り替え
社会保険資格を喪失した場合には、14日以内にお住まいの市区町村役場で国民健康保険への加入手続きが必要です。日本は国民皆保険制度のため、社会保険資格を喪失した翌日が国民健康保険への加入日となり、自動的に保険料も発生します。
健康保険が適用となる医療サービス
医療費の一部負担金を支払い、診察・処置・投薬、薬剤の調剤といった医療サービスを受けることを、療養の給付といいます。療養の給付の対象となる医療サービスを解説します。
適用となる医療サービス
医療費の一部負担金を支払い、診察・検査・処置・投薬、薬剤の調剤などの医療サービスを受けることを「療養の給付」といいます。病気やけがなど身体に異常がある際に受ける以下のサービスは、療養の給付の対象となります。
- 診察
- 検査
- 処置・手術
- 投薬・注射
- 治療材料の支給
- 入院・看護(医師が必要と認めた場合)
一方で、入院時の食事療養費や生活療養費は一定額を自己負担する必要があり、差額ベッド代(個室料など)は全額自己負担となります。
適用外の医療サービス
健康保険における療養の給付の対象は、病気やけがなどに対する医療サービスであり、日常生活に支障がない状態で受ける医療サービスや、国が承認していない治療や薬は適用となりません。具体的には次のようなものが健康保険の適用外です。
- 美容を目的とした整形手術(美容整形)
- 美容目的の歯列矯正
- 正常な妊娠・分娩
- 経済的理由などの人工妊娠中絶
- 健康診断・人間ドック
- 予防接種
- 差額ベッド代
- 未承認の医薬品・保険適用外の治療(自由診療)
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よくある質問:健康保険に関する疑問を解決
最後に、健康保険に関するよくある疑問を解説します。
高額療養費制度とは
高額療養費制度は、1カ月に支払った医療費が上限額を超えた場合に、その超えた額が支給される制度です。上限額は年齢や所得によって決まっており、支払い後に申請を行うことで払い戻しが受けられます。また、事前に「限度額適用認定証」を入手しておくと、医療機関などでの支払い時に提示することで、支払額を自己負担限度額までに抑えられます。
保険証を紛失した場合の対応方法
保険証を紛失した場合には、加入している医療保険の保険者に連絡し、被保険者証等の再交付を申請してください。マイナ保険証の場合には、マイナンバーカード総合窓口に利用停止の連絡をしたうえで、お住まいの市区町村で再発行できます。また、個人情報が含まれていますので、万が一に備えて警察に届け出ることも大切です。
