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介護現場の業務効率化を実現する秘訣とは?生産性向上の手順
公開日:2025年04月09日
更新日:2025年11月12日
介護現場の業務効率化を実現する秘訣とは?生産性向上の手順

いま介護業界が直面する課題とは?

生産人口の減少は、社会にさまざまな影響を与えています。高齢化の進行とともに需要が高まっている介護の現場においても例外ではありません。介護業界が抱える人手不足問題について解説します。

介護業界と人手不足

高齢化が進む日本において、介護職員数の確保は切迫した課題となっています。厚生労働省が2024年に公表したデータによると、2026年度には240万人、2040年度には272万人の介護職員が必要になると推計されていますが、2022年度時点での介護職員の数は約215万人です。2026年度までには25万人、2040年度までには57万人の介護職員を増やす必要があります。

業務効率化のポイント

介護職員の人手不足という問題を受け、政府は介護報酬の引き上げや外国人材の受け入れ要件の緩和を進めています。しかし、生産人口の減少が進む中で、介護職員の数を増やすのはそう簡単なことではありません。また、人材の不足という問題を抱えながらも、介護サービスの質は維持していく必要があります。

このような背景から、「介護現場革新会議 基本方針(2019年3月28日)」において取り組む必要があると述べられているのが、「人手不足の中でも介護サービスの質の維持・向上を実現するマネジメントモデルの構築」「ロボット・センサー・ICT の活用」「介護業界のイメージ改善と人材の確保」です。マネジメントモデルの構築とテクノロジーの活用により生産性を向上することで、介護業界のイメージ改善と人材確保・定着促進を図りたいという考えがあります。

効率化の第一歩:マネジメントモデルの見直

「人手不足の中でも介護サービスの質の維持・向上を実現するマネジメントモデルの構築」は、介護現場の業務効率化を進めるうえで基盤となる取り組みです。まずはそのために覚えておきたい2つの用語を解説します。

介護現場における3Mとは

マネジメントモデルを見直すうえで、まずすべきことの一つに「3M」の洗い出しと削減があります。介護現場における3Mとは、業務効率化の妨げとなっている「ムリ」「ムダ」「ムラ」のことです。

ムリとは、設備や人材の心身への過度の負担を意味し、「キャリアの浅い職員が一人で夜勤をする」「体重80kgの男性利用者のポータブル移乗を女性の介護職員が1人で対応する」といった事例が当てはまります。ムダは、「利用者を自宅に送った後に忘れ物に気づき、もう一度自宅に届ける」「バイタルなどの記録を何度も転記している」といった、本来であれば省略できる業務のことです。ムラは、「手順通りに作業する職員と自己流で作業する職員、状態に応じて介助する職員がいる」「曜日によって、夕食の食事介助の介護スタッフ数がばらつき、食事対応に差が生じる」「介護記録の研修もなく、記載の仕方が職員によってマチマチで正確に情報共有がなされない」といった、人・仕事量の負荷のばらつきを指します。

介護現場における5Sとは

介護現場における5Sとは、整理・整頓・清掃・清潔・躾のことです。このうち、要るものと要らないものを分けて要らないものを捨てる「整理」、決められた量の決められたものを決まった位置に配置することで手元化(取り出す手間を省くこと)する「整頓」、必要な時にすぐに使えるよう点検をする「清掃」のことを3Sと呼びます。「清潔」は3Sを維持すること、「躾」は決められたことをいつも正しく守る習慣をつけることを指します。

介護現場の生産性向上のための7つの取組

介護現場における「ムリ・ムダ・ムラ」を見つけ解消していくことが、業務効率化の一歩となります。そのための7つの取り組みを解説します。

職場環境の整備

職場環境を整備することは、効率的で質の高い介護サービスを提供するための基本です。まずは、前述した5Sの考え方と意味を理解し、その視点に沿って要改善項目を洗い出しましょう。洗い出した要改善項目はリスト化し、誰がいつまでに改善するのかを決めていきます。優先順位をつけ、一つひとつ取り組むことで、計画的に改善を進めることができます。

業務の明確化と役割分担

業務を効率的に進めるためにも、職員の負担を減らすためにも、業務の明確化と役割分担は重要です。役割分担にあたっては、まずは誰がいつどのような業務を、どの程度の時間をかけて行っているのかを把握するようにしましょう。そのうえで、3Mとなっている部分がないかを探します。業務における3Mがあった場合、その業務を取り除いたうえで、新たな業務の流れを作成し、改めて役割分担を行います。この際、過去の役割分担にとらわれることなくゼロからマッチングすることで、一気に業務効率化が向上することもあります。

手順書の作成

手順書は、全職員が共通認識を持つための道しるべとなるものです。単なる業務マニュアルではなく、熟練度を上げるためのトレーニングツールとしても利用できます。作成にあたっては、各職員の業務を、手順や方法とともに書きだします。その後、3Mや効率化のための工夫などを見つけたうえで、やるべき手順を明確に定めていきます。一目でわかりやすいフロー図などを用い、誰が対応しても同じ質のサービスを提供できるようにしておくことが大切です。

記録・報告様式の工夫

記録・報告様式の工夫をすることで、利用者の経時的変化や、職員の報告内容などの偏りが見えてくるようになります。そのためにまずは、帳票・項目の必要性を見直しましょう。重複している項目や、関連事項であるにもかかわらず複数の報告書に分散している項目などがあれば、統合するなどして内容を整理します。また、その際には誰がいつ記入するのかといったルールも改めて設けるようにしましょう。その後、新しいルールに則って実際に運用を開始し、記入方法やルールに関して改善を重ねていくと、より使いやすくなっていきます。

情報共有の工夫

利用者の安全を確保し、質の高い介護サービスを提供するために、職員同士の情報共有はとても重要です。まずは、どのような情報を、いつ、誰に共有する必要があるのかを整理するようにしましょう。その情報共有が、報告・連絡・相談のどれにあたるのかを明確にしておくことも、情報の整理をするうえで役立ちます。情報共有事項の整理ができたら、その情報の渡し方と拾い方を決めていきます。情報共有の手段として、タブレット端末やインカムなどのICT機器を活用すると、効率をさらに高めることができます。

OJTの仕組みづくり

OJT (On the Job Training)は、実践力を身に着けるための効果的な方法であり、新人教育の場面はもちろん、ベテラン職員やマネジメント層の人材育成の場面でも効果を発揮します。しかし、教える人によっては目標や手順にばらつきが出てしまうというリスクもあります。そうならないために、OJTにおいて教育をする内容、方法、目標、評価方法を明確にしておきましょう。また、教える側に対しても、研修などを行うことで一定の教育スキルを身に着けてもらうことが大切です。

理念・行動指針の徹底

業務の役割分担や手順書の作成をしていても、介護の現場では不測の事態が起きることがあります。そのようなイレギュラーな場面でも適切な行動をとれるよう、理念・行動指針を徹底しておくことは非常に大切です。職員一人ひとりに理念や行動指針が浸透しているかを確認するようにしましょう。自分の業務が、理念や行動指針にどのようにつながっているのかを、個々の職員が意識することが大切です。

ロボット・センサー・ICT技術の導入事例

介護現場の業務効率化を図るうえで、ロボット・センサー・ICTといったテクノロジーの活用が推進されています。各種テクノロジーの導入事例と、導入のためのポイントを解説します。

介護ロボット導入による業務効率化の事例

介護現場で利用されるロボットには、移乗介助や移動支援、見守り支援、排泄支援、入浴支援、介護業務支援といった種類があります。パワードスーツは、主に移乗介助を目的として介護者が装着するものです。装着することでおむつ交換や車いすへの移動の際の足腰への負担を軽減することができます。実際に導入した施設では、パワードスーツにより職員の腰痛が軽減し、また、ゆっくりと時間をかけて介助できるようになったことでおむつ漏れが減ったという結果が出ています。

見守り支援システムを導入した施設では、夜間の定時巡視業務時間を、それまでの5時間から0時間にまで削減できたという変化がありました。見守り支援システムは、センサーによって利用者の体勢や呼吸の状態、覚醒状態などさまざまな情報を感知できるシステムです。導入することにより、職員の巡視業務時間の削減はもちろん、定時巡視が原因で利用者の睡眠を妨げるといったことも少なくすることができます。

介護ロボット導入のステップとポイント

介護ロボットを導入する際に大切なのは、導入体制を整えておくことです。導入における担当者や流れを決めておくことで、職員の反発や、有効活用できていない状態を避けやすくなります。また、導入する機器を決める際は、可能な限り実機を取り寄せて試用しておくようにしましょう。実際に使ってみることで、施設の規模や目的に合った機器を選びやすくなります。導入する機器が決まったら、いつ導入し、どのように使用していくのかを検討しましょう。一度に大きく変化させるのではなく、小さく開始することで導入計画がうまく進みやすくなります。

業務効率化によるイメージ改善と人材確保

介護職員が生き生きと働き、介護現場が地域の安心を支える場所であり続けるためには、業務効率化によって介護業界のイメージを刷新し、人材確保を進めることが大切です。

介護業界のイメージ刷新

介護業界に対し、「きつい」「汚い」「危険」の頭文字をとった3Kをイメージする方は少なくありません。厳しい労働環境に直面し、短期間で離職してしまう職員がいるのも事実です。新たなマネジメントモデルの構築やテクノロジーの活用により、介護現場の業務効率化を推進することは、介護業界のイメージを刷新することにつながります。

多様な人材の参入促進

また、そのように介護業界のイメージを刷新することは、人材確保に貢献します。業務の効率化や負担軽減が可能になることで、心身ともに健康な高齢者や外国人労働者など、多様な人材の参入を促進することもできます。

持続可能な業務効率化のためのポイント

業務効率化は、一朝一夕にいくものではありません。改善計画を進めるうえで生じる可能性があるハードルについて、その解決方法を解説します。

職員の足並みがそろわないとき

業務効率化に対し、後ろ向きな反応をする職員や、協力的でない職員もいるかと思います。そのような場合は、まずは小さな改善から始めてみてはいかがでしょうか。お試しで環境整備(5S)に取り組んでみたり、現場の意見を聞き取りしてみたりといった、受け入れやすいアプローチから始めるのがおすすめです。

課題が多すぎるとき

一度にたくさんの課題を解決しようとすると、すべての課題に手が回らなくなってしまったり、職員が及び腰になってしまったりします。課題が多すぎる場合には、優先順位をつけて、少しずつ取り組んでいくようにしましょう。初めて取り組む課題に関しては、職員の意欲が強いものや、比較的簡単にできそうなもの、楽しんでできそうなものなど、取り組みやすい課題を選ぶのがおすすめです。

改善計画の指標が「時間」だけになっているとき

業務効率化の指標として「時間」はとても大切ですが、時間だけが指標になっていると、職員の負担は改善されなかったり、サービスの満足度が下がってしまったりします。時間だけでなく、顧客満足度や離職率、介助にかかる職員の人数など、さまざまな面から指標を決定しましょう。業務効率化の目的や目指すべき介護の姿を念頭に置いて考えることが大切です。