薬剤師の役割とキャリア、取り巻く環境 | 教えてグッピー
2025年7月16日更新

薬剤師の役割とキャリア、取り巻く環境

薬剤師の将来性

国民の5人に1人が後期高齢者(75歳以上)となる2025年には、医療や福祉をはじめとしたさまざまな分野で超高齢化による影響が出ると考えられています。では、薬剤師にはどのような影響があるのでしょうか。薬剤師を取り巻く環境を紐解き、今後のキャリアデザインにおいて参考になる情報をお届けします。

▼ 目次を表示

薬剤師を取り巻く「医薬分業」

現状と今後は?

医薬分業率は、2022年度に76.6%となり、急成長期を経て安定成長期に入りました。

今後も緩やかな伸び率を見せていくであろう医薬分業においてこれからの課題となるのは、分業ならではの質の向上です。医薬分業であるからこそのメリットをいかに追求できるかが、これからの薬局にとっての大きな課題となるでしょう。

薬局の様々な機能

また、薬局の質が問われるということは、薬剤師の質が問われるということでもあります。薬剤師は、まずは医薬分業の基本である、医師とは別の立場からの処方チェックを万全にすることが大切です。さらに、医薬分業であるからこそ、薬剤師は患者さんの薬剤服用歴などを一元管理できます。その立場を活かし、特に高齢者においてのポリファーマシー解消への貢献も期待されます。

高齢化の進展や入院日数の削減により、薬剤師に期待される役割は今後さらに広く、高度化していくことが予想されます。そのような状況の中でより良い医療が提供できるよう、自己研鑽を続けていくことが薬剤師には求められています。

薬剤師と薬局の未来

これからの薬局のあり方とは?

従来の「調剤を行う場所」に加え、薬局にはさまざまな機能が求められるようになってきています。

その一つが「かかりつけ薬剤師・薬局」です。 「かかりつけ薬剤師」制度では、担当の薬剤師が薬の一元管理や24時間体制での相談対応、医師への服薬状況や体調変化の報告を行うことで、医師や病院よりも身近な医療従事者として、地域住民の健康管理を担う役割が求められています。

薬局の様々な機能

健康サポート薬局」は、かかりつけ薬剤師・薬局の機能に加えて、薬や健康、介護などに関するサポートが行える薬局のことであり、厚生労働大臣が定める一定基準を満たした薬局が届け出を行うことで認定されます。2023年9月末時点で3,123件の届出が出されており、健康相談への対応と適切な受診勧奨、市販薬や健康食品の相談・販売、健康に関するイベントを行うことなどが要件となっています。

また、特定の機能を持つ薬局を都道府県知事が認定する制度も設けられました。 これは外来や在宅で薬物治療を受ける患者さんが安心して治療を続けられるようにサポートするための制度です。

地域の医療機関や薬局と連携することで、複数の医療機関と自宅での医療をつなぐ役割を持つ「地域連携薬局」、主にがん領域を対象に高度で専門性の高い薬学管理を行う「専門医療機関連携薬局」が認定を受けています。

薬局と医薬品販売業・店舗数の推移

高齢者人口の増加に伴って調剤市場の規模は今後も拡大していくことが予想されますが、それと並行して小規模薬局の経営は厳しくなる可能性が指摘されています。これは、調剤報酬や薬価の引き下げ、ジェネリック医薬品の増加による過剰在庫のリスク、新型コロナウイルスや物価高の影響によるものです。

薬局と医薬品販売業・店舗数

同様のリスク・影響を受ける大手薬局チェーンは、スケールメリットを生かして医薬品の大量購入や機械化による業務量の低減、在庫管理の簡便化といったアプローチをとることができ、小規模薬局ではそういったアプローチが困難なために、規模による淘汰が進む可能性があります。

ただし、小規模薬局の中にはその専門性や独自性を活かしながら地域に密着した経営を続ける薬局もあります。かかりつけ薬局や健康サポート薬局といった機能を持ちながら、独自の特徴を生かした地域へのサポートを行えるかどうかが、薬局として生き残るためには重要だといえるでしょう。

調剤チェーン・ドラッグストア売上高

2023年の日本全体の薬局調剤費は7兆8,300億円ほどとなっており、売上上位を占める調剤薬局企業は実績のある中小規模の薬局を傘下におさめることで、企業規模を拡大しています。また、ドラッグストアの市場規模は、調剤を含めて8兆円超となっており、こちらも順調に成長を続けていることがうかがえます。

調剤チェーン・ドラッグストア売上高

厚生労働省は「2025年までにすべての薬局をかかりつけ薬局へ」という薬局再編の全体像を掲げており、規模が大きい薬局チェーンであればあるほどこの体制の変化に対応できることから、今後もM&Aによる業界再編が進む可能性はあるといえます。

薬剤師のさまざまなキャリア

薬局に求められる役割が増え、業界の再編も進む中で、薬剤師としてのキャリアを着実に積み上げていくためにはどのような選択肢があるのでしょうか。薬剤師のキャリアの選択肢やそれぞれの特徴について解説します。

調剤薬局でのキャリア

また、調剤薬局でのキャリアパスとしては、一般薬剤師から管理薬剤師(店長)になり、その後はエリアマネージャー(ブロック長)とキャリアアップしていくのが一般的です。一般薬剤師から管理薬剤師になることで、平均年収は486.4万円から734.9万円へと急増します。エリアマネージャーは、地区内にある5〜10店舗ほどを管理・監督する役職であり、大手薬局チェーンでの年収相場は700〜800万円ほどとなっています。

店舗数による年収の違い

調剤薬局で働く薬剤師の年収は、薬局の店舗数によっても変動します。

一般薬剤師の場合は、1店舗のみの薬局では587.7万円、2~5店舗の薬局では448.2万円、6~19店舗の薬局では488.8万円、20~49店舗の薬局では498.5万円が平均年収です。

管理薬剤師の場合には、1店舗のみの薬局では933.1万円、2~5店舗の薬局では805.2万円、6~19店舗の薬局では688万円、20~49店舗の薬局では669.6万円となっており、店舗数が少ないほど平均年収が高い傾向にあります。

病院薬剤師や研究職

病院に勤務する病院薬剤師は、医薬品の管理、入院患者さん用の調剤や製剤、注射薬の調剤、薬歴管理、病棟での服薬指導、医薬品情報の管理・発信、さらには治療薬物モニタリング(TDM)や医師への処方提案などを病院にて行う仕事です。以前は「狭き門」として知られていましたが、「病棟薬剤業務実施加算」が新設された2012年以降は多くの病院が薬剤師の雇用を進めています。募集時期は病院によって異なり、欠員が出るごとに募集をかける病院も少なくないため、病院薬剤師を希望する場合にはこまめに求人情報をチェックするようにしましょう。

日本CRO協会

そのほか、薬剤師の職場には製薬会社やCRO・SMOもあります。製薬会社での薬剤師の仕事は、研究・開発や学術、情報収集、各種管理業務、営業など幅広く、最新の医学情報を医師などに提供するメディカル・サイエンス・リエゾンという職種や、社内や医療現場の関係者向けに製品や副作用、安全性や有効性などの情報を提供する学術・DI(Drug Information)部門での活躍も注目されています。医薬品開発業務受託機関を指すCRO、治験施設支援機関を指すSMOでは、それぞれ製薬会社と医療機関からの依頼を受け、治験がスムーズに進むようサポートを行います。CROでは承認申請や製造販売後調査の支援を行うこともあります。

在宅医療における専門性

在宅医療における薬剤師の役割は、患者さんやそのご家族に対して安心して受けられる薬物医療を提供することです。薬や衛生材料のお届け、服薬指導、残薬管理などのほか、「薬の飲み忘れがないように投薬カレンダーを設置する」「使いやすいピルケースを用意する」といった在宅医療ならではの工夫や提案も行います。また、医師や看護師、ケアマネージャーやヘルパーとの連携も欠かせません。情報管理はもちろん、治療における課題解決のための話し合い、薬の飲み忘れ防止や副作用に関する指導なども、在宅薬剤師に求められる役割の一つとなっています。

薬剤師による在宅業務のニーズ

薬剤師の新しい役割

改正薬機法等により、薬剤師は服薬状況の把握や薬学的知見に基づく指導(服薬フォローアップ)を、調剤時だけでなく、電話やオンラインツールを使って継続的に行うことが義務化されています。また、外来・在宅医療の推進に伴い、病院と薬局の薬剤師の連携(薬薬連携)はさらに強化され、薬局薬剤師からの処方提案、在宅医療における薬剤管理や服薬指導は増加していくことが見込まれます。

患者が薬局を選択する理由

このように求められる役割が広がりを見せる中、薬剤師はその専門性をさらに高めるとともに、コミュニケーションスキルやマネジメントスキルといった対人業務に求められるスキルを高めていく必要があります。薬局を選択する理由として挙げられている「信頼できる薬剤師がいるから」「さまざまな相談をいつでもできるから」といったニーズに応えられる薬剤師であるよう努めることが、薬剤師としてのキャリアを切り開いていくきっかけになるといえるでしょう。

あなたのプロフィールを見た事業所から届く!
登録してスカウトを受け取る →